アスパラガスは猫に与えても大丈夫な野菜です。アスパラガスは適量ならば、猫の健康にメリットがある野菜です。
ですが与えすぎるのもいけない野菜です。たくさんのアスパラガスを猫に与えることはないと思いますが、与えすぎには気をつけましょう。
また観賞用のアスパラガスは猫の届く場所に置かないようにしましょう。
猫にアスパラガスを与えるには何に注意した方がいいのか、アスパラガスが猫の健康に与えるメリット、食用アスパラガスと観葉植物アスパラガスの違いについてまとめました。
目次
アスパラガスは猫が食べてもいい野菜だけれど・・・
ネットの情報の中などに、アスパラガスを猫に与えていいという説と、与えてはいけないという説とがあって、どれが正しいのか迷ってしまいまうことがあると思います。
野菜の中でもアスパラガスにしかない栄養素も含まれていて、猫の健康に役立つ栄養素がたくさんなのは確かなんですが、その反面、与える量や頻度を間違うと猫の体に悪影響を及ぼします。
これはアスパラガスに限ったことではなく、他の野菜にも同じことが言えますし、さらに言うと猫にとってというだけでなく人間にも言えることなんです。
例えば、じゃがいもの芽の毒は危険と誰もが知っていますが、このじゃがいもの毒ソラニンやチャコニンは、実はじゃがいもの芽に特別に多いというだけで皮や中身にも含まれています。
そして年間55kgのじゃがいもを食べたとすると、じゃがいもの毒を摂取した総量は10g程度ですが、この10gの毒ををまとめて摂ったとすると馬1頭を殺せるほどの毒になります。
ではどうして私たちがじゃがいもを食べても大丈夫なのかと言えば、1度に55kgものじゃがいもを食べるわけでなく年間を通じて少しずつ食べているので、食べる度に入ってきた少量の毒を体が解毒してくれているからです。
つまり人間を含めた動物にとって、野菜などを食べるということは毒と薬の境目を上手に利用する行為なんですね。
そして、その毒と薬の境目は人間と猫や犬では違ってきます。それは野菜そのものに原因があるわけでなく、食べる側の解毒する能力が大きく関わってくるからです。
猫に与えてはいけない野菜として玉ねぎは有名ですが、猫と人間の解毒する能力の差として代表的な野菜です。
玉ねぎに含まれている辛味成分のアリルプロピルジスルファイドは、人間が食べても解毒が追いつくのでみんな普通に食べていますが、猫は解毒が追いつかずに玉ねぎ中毒を起こすというわけです。
では本題のアスパラガスはどうかというと、栄養素が豊富な野菜ではあるもののアルカロイドという毒も含まれています。
アルカロイドとはウィキペディアによると以下のように書かれています。
アルカロイドは、微生物、真菌、植物、両生類などの動物を含む非常に様々な生物によって生産され、天然物(二次代謝産物とも呼ばれる)の中の一群を成している。多くのアルカロイドは酸塩基抽出(英語版)によって粗抽出物から精製できる。多くのアルカロイドは他の生物に対して有毒である。しばしば薬理作用を示し、医薬や娯楽のための麻薬としてや、幻覚儀式において使用される。
つまり、アルカロイドは特別な毒というわけでなく、私たちが体にメリットが多いと思っているいろんな野菜にも普通に含まれているデメリット(毒)なのです。
人間も食べすぎてはいけない野菜の毒である植物性アルカロイドですから、猫に野菜を与える時はさらに食べ過ぎにならないように気をつけてあげることさえできれば、アスパラガスなど野菜のメリットを健康に役立てることができます。
植物性アルカロイドが多い野菜として代表的なものは、アスパラ、菜の花、ふきのとうなどの春野菜、その他ではナス、トマト、ジャガイモ、ピーマン、唐辛子などのナス科野菜です。
アスパラガスもアルカロイドが含まれているので、他のアルカロイドが多い野菜を一緒に与えないように注意すれば、1度に摂るアルカロイドの量が多くなってしまうのを防げます。
また、アルカロイドは上記の野菜だけでなく他の野菜にも基本的に含まれています。
野菜のアルカロイドが心配であれば、猫に野菜を与える時は食べていい野菜の中からいつも種類を変えて、1回のご飯に入れる野菜をアスパラガスならアスパラガスだけ、人参なら人参だけという風に野菜の種類を1つにしてあげることでデメリットをコントロールできます。
猫の健康に良いアスパラガスの栄養素や成分はどんなもの?
アスパラガスは水分が90%で、タンパク質、脂質、炭水化物の3代栄養素はほとんど含まれていませんが、アスパラガスにしかない栄養素やビタミン類、ミネラルなどが豊富です。
アスパラガスの100gあたりのエネルギーは22Kcal、1本あたりは約5kcalと、とても低カロリーでヘルシーな野菜です。
飼い主さんにもおすすめな野菜なので、飼い主さんが食べるついでに猫ちゃんにもおすそ分けしてあげると良いですね。
アスパラギン酸
アスパラギン酸はアスパラガスから発見されたアミノ酸で、疲労回復に重要な役割を果たすアミノ酸であり、スタミナドリンクの有効成分としても使われています。
他にも免疫力アップや、利尿作用による腎臓や肝臓機能を回復する効果があり、リラックス効果や睡眠効果もあります。
特に猫は腎機能に障害が出ることが多いので、普段から腎臓の機能を高めることができる栄養素を与えてあげたいものですね。
メチルメチオニン
別名「ビタミンU」や「キャベジン」とも言われるメチルメチオニンは天然の胃腸薬と言える成分です。
胃の粘膜の新陳代謝を促進したり、胃酸の分泌を抑えてくれる働きがあり、あの有名な胃腸薬にも使われている成分です。
猫ちゃんが胃腸炎になった時はアスパラガスの柔らかい穂先をピューレ状にして与えてあげると胃腸薬代わりになりますよ。
ルチン
ルチンは蕎麦にも含まれることで有名なポリフェノールの一種です。
ルチンは強い抗酸化作用や、毛細血管を強く丈夫にしてくれるため動脈硬化や高血圧の予防に加え、利尿作用もあることから冷えやむくみの予防などの効能があります。
ルチンの抗酸化作用は体内で増えた活性酸素の除去に役立ちます。
体が呼吸などで体内に取り込んだ酸素の一部は活性酸素となり、体に有害なウィルスや細菌などを酸化させることで攻撃してくれる大切な存在ですが、活性酸素が増えすぎると正常な細胞までも攻撃して酸化させ、癌など様々な病気の原因となります。
ルチンやβ-カロテンなどの抗酸化物質は体の酸化を食い止め、病気の予防だけでなくアンチエイジングにも重要な存在です。
人間と同様に猫にとっても、病気の予防や体の老化を緩やかにすることは健康で長生きするためには欠かせない要素ですね。
GABA
GABAはGamma Amino Butyric Acidの略で、植物や動物や人間の体内、主に脳などに存在する天然アミノ酸のひとつです。
アミノ酸は主にタンパク質を構成する要素ですが、GABAのアミノ酸は脳や脊髄で神経伝達物質として働き、興奮を鎮めリラックスをもたらす効果が期待できます。
ですが、GABAを経口摂取しても脳の「血液脳関門」という所を通過できないので、脳の中で直接的にリラックスをもたらす抑制性の神経伝達物質として働くことはないと言われています。
でもGABAが入っている野菜や食品を食べることに意味がないのか?と言えば答えはNOです。
脳の中にはGABAの存在を認識し抑制性の反応を起こさせる、GABA受容体と言われるスイッチのようなものがものが存在するのですが、これが腸の中にも存在するからです。
そして経口摂取したGABAによって腸内のGABA受容体が刺激を受け、その刺激が脳と腸を繋ぐ中枢神経を伝い脳に届くことで、脳内のGABAが合成・生成されることに繋がると考えられているからです。
ストレスは病気の原因にもなります。体内で作られるGABAだけでなく、アスパラガスなどGABAが入っている野菜を積極的に取り入れて、飼い主さんも猫ちゃんもストレスフリーな毎日を過ごしましょう。
ビタミン類とミネラル
アスパラガスは上記の栄養素の他にもビタミンA、ビタミンB1、B2、葉酸、ビタミンC、ビタミンEなどのビタミン類、カリウムや鉄などが含まれています。
主に肉食の猫は野菜の栄養素は必要ないと単純に捉えられがちですが、野生の肉食動物は獲物を捕獲した際に真っ先に内蔵から食べ始めます。
その理由は草食動物の胃の中などに入っている植物で、そこから豊富なビタミンやミネラルなどの栄養をを間接的に摂っているわけです。
ペットとしての肉食動物である猫ちゃんはそういう機会がないので、お肉そのものに含まれるビタミンやミネラルの他にも、野菜などからビタミン・ミネラルを補ってあげる必要があります。
猫に与えるアスパラガスの調理法
猫ちゃんにアスパラガスを与える時は柔らかい穂先がおすすめです。アスパラガスの穂先にはアスパラギン酸などの栄養が詰まっていていますし、柔らかい部分ですから猫にとっても消化がしやすいでしょう。
アスパラガス全体を与える場合は皮の下処理をきちんとしましょう。アアスパラガスの皮を剥く時はまず、根本と穂先を持って弓なりに曲げると根本から5cmくらいのところで自然にポキっと折れますので、その折れた根元の部分の皮を白い部分が見えるまでピーラーなどで剥きましょう。
アスパラガスは下茹ですることが多いと思いますが、アスパラガスにはアスパラギン酸や水溶性ビタミンが豊富なので茹でるよりは焼く、蒸す、グリルなどすると栄養が逃げません。
太いアスパラガスの火の通りが心配な場合はあらかじめ電子レンジで加熱しましょう。加熱する時間は太いアスパラガスが2〜3本で、2分半から3分が目安です。
アスパラがガスはあまりアクが出ないので、リゾットなどに入れる野菜としてもおすすめです。猫の好きな鶏肉などと一緒にリゾットにして冷まして与えると、アスパラギン酸と水溶性ビタミンもまるごと摂れるのでいいですね。
アスパラガスの観葉植物は猫の届かない所に置きましょう
アスパラガスは主にユーラシア大陸、アフリカ大陸とその周辺の島々などを中心に自生し、その種類は約150種類から300種類もあると言われています。
食用アスパラガスと観葉植物のアスパラガスは同じキジカクシ科のクサスギカズラ属ではありますが、食用と観賞用では品種が違います。
食用のアスパラガスの種類は「Asparagus officinalis (和名 オランダキジカクシ)」と言い、原産は地中海東部です。
もともとアスパラガスは江戸時代に観賞用としてオランダから持ち込まれました。その中でオランダキジカクシだけが、大正時代から本格的に食用として北海道で栽培されるようになります。
食用とされているのはこのオランダキジカクシの若茎の部分です。地上から20〜30cm伸びた部分がグリーンアスパラガスで、地中に埋めたまま日光に当てないものがホワイトアスパラガスになります。
観葉植物のアスパラガスはオランダキジカクシ以外のアスパラガスで、園芸店などでの流通名は、「スプレンゲリー」や「ナナス」、「メイリー」や「スマイラックス」など他にもさまざまな種類があります。
観葉植物と食用のアスパラガスは種類が違っても、同じキジカクシ科のクサスギカズラ属であることには変わりはなく、天然毒であるアルカロイドも含まれています。
これらのアスパラガスの観葉植物を猫が自由に届く所に置いてしまうと、飼い主さんの見ていないスキにかじったりすることで、食べた量や頻度などを正確に把握することが難しく、危険な状態になるまで気が付かない可能性があります。
アスパラガスの毒素であるアルカロイドの量が多くなることによる危険は上記でも述べましたが、あくまでも飼い主さんの正しい知識のもとに適切に与えてあげてこそ安心と言える野菜です。
アスパラガスの毒と薬の境目を超えないよう、飼い主さんの目が行き届く範囲で与えてあげることが大切な野菜です。
まとめ
アスパラガスだけでなく野菜が好きな猫ちゃんは多いので、安全な範囲でいろいろな野菜を食べさせてあげたいですね。
猫に与えていい野菜について正しく理解し、愛猫にもバラエティー豊かな食生活を送らせてあげましょう。